いわゆるトランプ関税(相互関税)の詳細が発表され、世界同時株安となっている。アメリカの株も大暴落だ。「開放の日」だとか「アメリカに莫大な富をもたらす」とか言っているが、とてもそうは思えない。そもそも関税を払うのは、アメリカの輸入業者である(輸出国側ではない)。当然関税分は商品価格に上乗せされ、アメリカ国民が払う事になる。アメリカ政府は儲かるのかもしれないが、国民からすると大増税に他ならない。これでアメリカに莫大な富をもたらしていると言えるのだろうか。
「輸入品は高いから国内品を買おう」となって、国内の製造業が儲かるという流れを期待してのことだと思うが、そうなる業種は限られているのではないか。既に海外との価格競争力を失った業界は国内の生産から撤退していて工場を閉鎖しているだろう。再稼働できるのならまだしも、工場自体がなくなっていれば新たに工場を建設しなければならない。そうなると建設費も馬鹿にならないし、稼働開始までに年単位の時間がかかる(完成した頃には関税が安くなっている可能性もあるので投資するにはリスクが高い)。安い労働力の(不法)移民も強制送還する方針なので、賃金が高い白人比率が上がることになる。また原材料は輸入することになるので、それには関税がかかってくる。直ぐに製造できるわけでもないし、それほど海外品より安くなるとも思えない。それに、関税で守られた業界は衰退すると相場が決まっている(守られているので競争力が弱くなる)。また、技術的に海外品に太刀打ちできないものであれば、高い海外品を買わざるを得ない。
結局割りを食うのはアメリカ国民。特にトランプ大統領を支持している白人貧困層のダメージが大きいだろう。バイデン氏がインフレにしたと批判しているが、トランプ大統領のほうがもっと酷いインフレを起こすと思われる。
では何故こんな政策をしているのか?トランプ大統領はこんなこともわからないのか?否、彼はわかってやっているのだ。本当は関税をやりたいのではなく、関税を取引材料にして各国とディールをしたいのだ(かなり脅迫的なのでディールとは呼びたくないが)。
各国が「アメリカに巨大な投資をする」「関税率を引き下げる」等々を確約すれば、追加関税を取りやめる。というものだ。実際に関税をかけないと本気度が疑われるので、一時的に関税をかけるのだ。
対抗して報復関税をかければ更に報復し返されるのは、第一次政権時代での対中関税で証明済みであるので、得策ではない。トランプ大統領は折れない。苦々しいが、経済を人質に取られているのでディールせざるを得ないだろう。かくして、アメリカは利益を得ることになる。
関税をかけ過ぎると結局アメリカが損するということは皆知っているので、アメリカでも株価が大暴落している。このままでは中間選挙で大敗北するのは想像に難くない。ようするにトランプ大統領は、中間選挙までにはディールで果実を得て、関税率を下げる。という戦略なのだろう。
関税をかけ過ぎると結局アメリカが損するということは皆知っているので、アメリカでも株価が大暴落している。このままでは中間選挙で大敗北するのは想像に難くない。ようするにトランプ大統領は、中間選挙までにはディールで果実を得て、関税率を下げる。という戦略なのだろう。
しかしこんな脅迫めいたことをして、お金を稼いでどうするのだろう。アメリカの信頼度は地に落ちることになる。徐々にアメリカとの取引が減っていき、経済は衰退することになるだろう。アメリカが覇権国ではなくなる未来が見えている。
「アメリカは再び偉大になる(MAGA)」とか言っているが、同盟国や友好国含めて世界中を敵に回してまで儲けて「偉大」と言えるのだろうか?偉大ではなく尊大の間違いだろう。
追記)
関税だけではなくその後のディールも含めると、結果的には「アメリカに莫大な富をもたらす」というのも、あながち間違いではないかもしれない。しかし、信頼というプライスレスなものを失うことになるのだ。